「現場でなんとかして育てる」「見て覚えろ」「上司の背中を見て育てる」──。これらは従来の“属人的なリーダー育成”の代表的なスタイルです。しかし、これでは再現性がなく、成果にもバラつきが出てしまいます。
今求められているのは、「戦略的な育成」です。属人性に頼らず、組織として意図的に、かつ継続的にリーダーを育てていく仕組みが不可欠です。では、どうすればそれが実現できるのでしょうか?
■ 属人的育成の限界とは?
まず、従来の属人的な育成の問題点を整理してみましょう。
- 育成の成否が育てる側の力量に左右される
- 経験則に基づく指導が多く、理論や根拠に乏しい
- “気づいたら育ってた”という偶発性に依存している
- 育成者の価値観が押し付けになりがち
このような状況では、リーダー層の育成が一部の部署や個人に偏り、組織全体としての力が伸びていきません。だからこそ、計画的かつ体系的な「戦略的育成」が求められているのです。
■ 戦略的育成に必要な「3つのステップ」
戦略的にリーダーを育てるには、以下の3つのステップが鍵となります。
① 【見える化】:理想の会社像・リーダー像を言語化する
まず最初にやるべきことは、「我が社にとって理想の会社はどんな状態で、そこでの理想のリーダーとはどんな人物か?」を明確にすることです。
たとえば…
- 自走するチームを作れる人
- 部下の可能性を引き出せる人
- 顧客や社会と誠実に向き合える人
こうした価値観を、感覚ではなく行動レベルで言語化することが重要です。これにより、評価や育成の指針がブレなくなり、組織全体で同じゴールを目指すことができます。
② 【仕組み化】:育成プログラムを制度として設計する
理想像が見えたら、次はそれに向けた具体的な育成ステップを設計します。
- 戦略的な配置転換(成長機会の提供)
- ロールプレイやシミュレーション研修の導入
- メンター制度や1on1の定着
- フィードバック文化の醸成
ここでポイントなのは、“一回限りの研修”では不十分ということ。育成は継続性が命です。学び→実践→内省→再学習のサイクルを仕組みに落とし込むことが、戦略的育成の真髄です。
③ 【文化化】:挑戦と成長を称賛する風土づくり
最後のステップは、「リーダーを育てること自体が文化になっている」状態(育成者の育成)を目指すことです。
そのためには、たとえ失敗しても挑戦したことを称えたり、育成に力を注いだマネージャーを評価する制度を整えることが有効です。
社員一人ひとりが、「自分も育てられてきたから、今度は育てる側に回る」というサイクルを自然に回せるようになると、組織にリーダーが次々と育っていく環境が整います。
■ リーダー育成に必要なのは「型」と「負荷」
当社のリーダー育成プログラムでは、戦略的な3ステップを実現するために、「リーダーシップの型」を明確にし、かつ「適切な負荷とフィードバック」をかける実践型トレーニングを採用しています。
例えば、疑似的なトラブル対応や部隊行動を通じて、以下のような力が養われます:
- 限られた情報での意思決定力
- 緊張下での冷静な対話力
- 仲間を鼓舞し、任務を完遂させる力
これは、座学だけでは決して得られない“体感知”です。
■ まとめ:戦略なき育成は、偶発任せの博打に過ぎない
リーダー育成において、「そのうち育つだろう」「現場で揉まれて覚えればいい」という考え方は、もはや時代遅れです。
今後求められるのは、「何を育てるかを決め、どう育てるかを仕組み化し、それを組織文化にする」こと。これが、属人的な育成から脱却し、戦略的に次世代リーダーを輩出し続ける唯一の道です。
次世代リーダーの育成を今から始めていきませんか?